桐野高明氏(国立医療センター総長)への要請・懇談の報告

日時:200810月7日(火曜日)午後5時〜6時

場所:東京大学病院入院棟A15階会議室にて

出席:桐野高明学術委員長、山崎力幹事長、景山恵一事務局長、石川理恵事務局員

    西山勝夫前滋賀医科大学教授(第27回医学会総会出展「戦争と医学」展実行委員会残務委員長)、刈田啓史郎東北大学元教授、肥田泰全日本民主医療機関連合会前会長、住江憲勇全国保険医団体連合会会長、長瀬文雄全日本民主機関連合会事務局長

 

〔要請要旨〕

1.はじめに西山勝夫氏より、2007年4月に大阪で開催された第27回日本医学会総会展示企画の一部として行った「戦争と医学」展実行委員会残務委員会委員長として、今回、第28回総会準備にあたり、上記テーマを医学会総会の正式企画として取り上げて頂きたい旨、これまで矢崎義雄会頭への要請文や8月20日には永井事務局長との懇談を行った経過を述べた。

2.その際、永井良三準備委員長からは準備委員会の立場は、あくまで総会事務局として調整が主たる役割であり、実際の企画内容は学術委員会が決めていくシステムとなっている旨が述べられ、今回の懇談に至ったこと。

3.日本の医学会は、例えば1934年に開催された第9回では石井四郎氏が講演するなど、戦争色を強め1938年の第10回総会、1942年の第11回総会まで続いたこと、また、戦後、ドイツ医学会がナチスドイツに医療界として加担してきたことをきちんと総括しているのに比べ、日本では、これまで「戦争と医学」について「加担してきた」あるいは「加担させられてきた」事実について、歴史的に総括も反省も出されていない。私たちは第27回医学会総会の出展企画として準備する中で実行委員会として、101の学会にアンケートを行ったが、24学会から回答があり、こうした問題を総括したことは「なし」が全てであった。1999年に行われた医学会総会で当時の高久史麿会頭は、「日本医学会が戦争に協力せざるを得なかった」ことを取り上げ、今後、「開かれた医療」「社会と共に歩む医療」を提起されている。

4.以上の内容を踏まえ、改めて2011年、東京大学が主管されて行われる第28回医学会総会で「戦争と医学」をテーマとして取り上げて頂くよう改めて要請を行った。また、同席した刈田委員、肥田委員、住江委員からもそれぞれ同様の趣旨の発言が行われた。

 

〔桐野委員長の発言要旨〕

1.桐野学術委員長より学術委員長として、皆さんの要請は会頭宛「要請文」とともに第28回医学会総会学術委員会に伝えること。ただ、学術委員会は、前回、永井準備委員長も言われたとおもうが、各学会から上がってきたテーマを調整するのが主目的であり、それ以外のテーマは原則扱わないことになっている。但し、矢崎会頭の意向であるとか、日本医師会(歴史的に日本医学会と日本医師会が同居状態となっており、その意向も大きいこと)などからの特別の要請があれば扱うこともある。そうした仕組みになっていることをご理解頂きたい。所属の学会から上がってくるのであれば議論は大いに可能である。前回も皆さんの要請が話題となったが、全体として積極的に取り上げる雰囲気はなかった。次回の学術委員会は2009年1月を予定している。

2.個人的には、皆さんが提起されている問題は、現時点でも解決ずみの問題とは思ってはいない。先延ばししていることが社会から医療界が不信を招いた一因でもあると思っている。私が努める国立国際医療センターが当時果たした役割、さらには戦争当時、東京大学でも少なくない医学生、医師が犠牲となっていることなど惨憺たる状況があった事実がある。戦争でなくなった医学徒の慰霊碑を学内に設置するのか、否かについて、加害責任も含めて大きな問題となり、今は弥生門の外に慰霊碑が出来ているような状況があった。

3.第28回医学会総会は、大阪で行ったような商業ベースの展示企画は行わないことは確認している。第28回医学会総会では展示委員会があり、例えば「癌」「生活習慣病」など検討されている。今のところ公募は考えていない。責任者は大江和彦氏である。

 

〔あらためて意見交換した内容要旨〕

1.前回、永井氏との懇談でも東京大学に「医学資料館」つくりの話しも出された。「京都大学病理学百年史」の中でも、「731」部隊の問題に触れ、この問題を総括しなければならないとの指摘もされている。また、これらの問題は京都大学だけではなく、当時の全医学部および医師に関わる問題でもある。

2.前回の私たちの実行委員会のシンポジウムに参加されたハーバード大学公衆衛生学教授のダニエル・ウイクラー教授も、「こうした問題(総括)を先延ばしすることは医学界全体の責任につながる」と指摘された。

3.指摘されたように、私たちも所属する学会、例えば日本産業衛生学会など、いくつかの学会に対し、こうした問題を取り上げるよう要請を行ってきたが、なかなか中心テーマとして扱ってもらえないのが実情である。大学内でも「言えない」雰囲気が少なからずある。

4.日本の医療が崩壊の危機にあるという現状認識は、医療界および国民的な共通の認識となっている。医師を増やすこと、社会保障費削減方針を撤回させ増額させることは思想信条を超えて取り組まなければならない課題である。

5.だからこそ、いつかは別として、医学界が自ら自浄作用を発揮し、「戦争と医学」の責任について総括しなければならない。最初のボタンをだれがかけるのか。日本人の医師が海外とりわけアジアに留学し、親しい関係になったとき、「自分の肉親も日本兵に殺された」などの場面に出くわせショックを受けることも少なくない。

6.話しの内容については、同感できるものである。

7.2011年の総会まで、まだ時間はある。医学界全体が、この総会を機会に「原点」に立ち戻り、是非、テーマに掲げて頂くことを要請したい。今回の意見交換や要請文の内容を積極的に紹介して頂き、反映されることを期待したい。

8.            学術委員長として改めて、要請があったことや要請文を紹介したい。

 

以上