第28回日本医学会総会 永井良三準備委員長、山崎力幹事長への要請の概要

 

日 時  2008年8月2010時から11

 

◎場 所  東京大学医学部第一研究棟2階 永井教授室(循環器内科学研究室)

 

◎参加者  西山勝夫委員長(滋賀医科大学名誉教授)、刈田啓史郎委員(東北大学元教授・

      15年戦争と日本の医学医療研究会幹事長)、長瀬文雄委員(全日本民医連事務

      局長)、住江憲勇顧問(保団連会長)、中 重治(保団連事務局長)

*先方は、第28回日本医学会総会 事務局長の影山恵一氏、事務局の石川理恵氏が同席した。

 

◎持参資料 @矢崎会頭へ6月16日に送付した要請文の写し(別紙1)、A200748日の国際シンポ会場での「大阪宣言」(別紙2)、B6月に105の医学会理事長へ送付した要請文の写し、C同医学会へのアンケート結果報告、D6月に各医学部・医大の医学部長へ送付した「戦争と医学」展関連資料活用のお願い文の写し、E同医学部長への医学教育に関するアンケート結果報告、Fパネル集「戦争と医学」、Gブックレット「戦争と医の倫理」 以上8点

 

(1)資料説明の後、以下のように西山委員長から要請主旨を述べた。

 

 15年戦争」と日本の医学・医療のかかわりの検証に関して、今度こそ日本医学会総会として公式の企画を設けていただきたい。時代の要請を汲み取り、第28回日本医学会総会でこの問題について討議検討し、同総会としての考え、態度を表明する企画をお願いしたい。矢崎義雄会頭と直接面談できないことは残念であるが、会頭への要請の一環であると理解しているので、要請内容をお伝えいただきたい。

 若干経緯を説明させていただくと、私たち「戦争と医学」展実行委員会が昨年の第27回日本医学会総会に取り組んだそもそもの理由は、日本医学会総会が第9回(東大、1934年)、10回(京大、1938年)、11回(東大、1942年)の医学会総会を通じてあの侵略戦争に荷担したにもかかわらず、そのことについて、終戦直後の1947年、東京大学医学部の田宮猛雄会頭のもとに開催された第12回日本医学会総会以来、一度も検証・反省の企画がなされたことがないからである。日本医学会を体制下におく日本医師会も同様であった。戦後60年間タブーとされ、21世紀を迎えて、さらにこのまま時を重ねてよいのか、そうした思いから有志が2006年7月に「戦争と医学」展実行委員会を結成し、日本の医学医療にとって根源的、原点に関わる問題として訴えてきた。

 第27回医学会総会に向けての取り組みでは、残念ながら公式企画にはしていただけなかったが、同総会後の記者会見での高久史麿日本医学会会長の記者の質問に対する回答に見られるように、第28回総会への宿題にすることができたと考えている。

 第28回日本医学会総会のイニシアチブで「未公開」「隠蔽」を含む、残された資料、あるいは散逸している資料や証言の収集と整理に着手され、真相の解明や反省の礎がつくられること、そのために医学・医療に関わる機関・組織あるいは全国の医学者、医師、医療人へその共同・協力の呼びかけをされることをお願いしたい。

 私たち「戦争と医学」展実行委員会による医学会、医学部に対する調査は端緒である。第27回総会では、私たちは企画展示の公募に応募したが、該当する公募はないと言われた経緯がある。第28回総会では、総会としての独自の企画のみならず是非公募テーマとし、草の根からの参加が可能となるようにしていただきたい。

 戦後学問の自由の大切さを説いた南原繁東大元総長は、出陣学徒を2階から空しく見送るしかなかったといわれている。再びそのような時代の到来を許さないためにも、イニシアチブを発揮していただくことをお願いしたい。

 

 

(2)参加者より要請主旨について以下のように追加説明を行った。

 

・刈田委員

 6月28日に東京大学医学部長の清水孝雄先生とお会いして、第28回総会に向けたご意見をお伺いしたところ、「戦争と医学」の問題については団塊世代として関心を持っているとのことであった。

 公衆衛生学教室の小林廉毅教授とも710日にお会いして意見交換をした。小林先生は、「若い人たちからの意見が大切である。関連学会にも要請をしてほしい」とのことであった。海外からもパネラーを招いたシンポジウム案の話では、日野原重明氏の名前が出た。

 

・住江顧問

 昨年の第27回医学会総会の私たちのパネル展示は、反響もあり大きな成果があった。第28回総会では、ぜひ正式な企画として実現したい。

 医学医療の高度化に伴って、医の倫理が改めて問われる時代になっている。過去の誤りについて謙虚に反省し、未来に生かすことが求められている。前回総会会頭の岸本忠三先生は、まだ機運ができていないといわれたが、日本の医学において大きな役割を果たしてきた東大医学部で開催される医学会総会は、一歩踏み出す絶好の機会ではないか。

 

・長瀬委員

 今年の原水爆禁止世界大会に参加して印象に残ったことは、アフガニスタンから匿名で参加した女性の発言であった。彼女は、アメリカの不当な侵攻によって混乱と無政府状態が続く中で、広島、長崎の惨事は私たちの未来であると語っていた。過去への反省なくしては、明るい未来はない。医学会総会としての正式企画をぜひ検討いただきたい。

 

(3)永井準備委員長、山崎幹事長の対応を含めた主なやり取りは以下の通り。

 

 永井準備委員長 我々は総会全体のお世話というか事務局的な役割を担っており、企画を決める権限はない。企画は学術委員会がプランニングして、日本医学会の幹事会で最終的に決められる。1つでも複数でもいいが、学会から企画をあげていただくのが一番いい。学会との連携が大切である。これがオーソドックスである。

 展示企画については、まだ決まっていない。各学会からの提案募集も今秋に行う予定である。ただ、現時点では前回のような企業などへの小間売り的な展示は予定していない。

 西山 日本医学会加盟学会の内、戦前からの学会が30数あるが、戦争協力に対する反省を示している学会はない。私もその内の産業衛生学会、衛生学会に入っているので、私なりに学会としての取り組みがなされるように取り組んできた。また、日本医学会における社会医学系の取り組みについては大阪大学医学部環境医学教室の森本兼曩教授にも要請をしてきた。

 高久史麿日本医学会会長が医学会会頭の時に編纂された「百年史」でも書かれているように、医学会総会が加盟学会の意思だけに基づいて企画運営されてきたわけでもない。戦争荷担の総会となった第9回、第10回、第11回総会は医学会当局の主導で企画運営されており、これに向き合うことが個々の加盟学会にあるというのはいかがなものか。

 学会からの企画募集は、6月末までと聞いているが。

 山崎幹事長 7月までに300を超えるテーマが学会から寄せられて、現在、学術委員会の前に医学会総会幹事会で検討中である。

 永井準備委員長 締め切ったわけではないのでフレキシブルに考えていただいてよいと思う。

 西山 個々の学会での戦争責任についての反省が行われない中で、医学会総会、日本医学会としてのイニシアチブが求められている。とくに、東京大学医学部が戦前、戦中、戦後の果たして来た役割や責任を考えると、この機会に積極的なイニシアチブを発揮していただきたい。臓器移植問題などこれまでも医学会総会会頭の主導で対応したことはある。

 展示企画については、どのような検討状況か。

 山崎幹事長 医学部医療情報経済学教室の大江和彦教授が展示委員長である。展示企画はこれから学会からの提案を受けて秋以降に本格的検討に入る。先ほどもふれたように、現時点では第27回総会のような小間売りの展示企画は予定していない。

 医学会総会の企画全体は、来月に第1回の学術委員会が開かれるのでそこで大枠が決まり、年内には詰まっていくことになる。

 刈田 東北大学では戦前戦中の教授会の議事録の整理に着手し、戦争協力の実態が明らかになりつつある。東京大学医学部では戦没者の名簿を整備したそうだが。

 永井準備委員長 220名をまとめた。創立150周年記念事業の一環で「医学生とその時代 東京大学医学部卒業アルバムに見る日本近代医学の歩み」という冊子をまとめた。残念ながら、東京大学医学部には医学史の講座がない。現在、資料館の準備を進めている。

 西山 学術委員会の桐野高明委員長には改めて要請を行うが、矢崎会頭にも本日の要請内容をお伝えいただき、ご検討をお願いしたい。